交通事故における過失割合について

交通事故解決において一番問題になり、また当事者のみなさんにも関心の高いのが「過失割合」「過失相殺率」の認定でしょう。事故関連調査に従事している私にとっても損害保険会社からの依頼案件の多くを占めるのがこの分野ともいえます。

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交通事故における過失割合について


たとえば「過失割合」の率が10%変わることによって、損害額の10%が自分の負担になるわけですから当事者のみなさんにとっても保険会社にとってもそれは直接懐に影響することとなり、その部分について神経質にならざるを得ないでしょう。

また車両保険に加入されていない場合は、過失割合によって自分の修理代金の支払い額に影響することになりますから、より神経質になることも理解出来ます。

車両保険に加入している場合は、双方が任意保険に加入していれば実質的にすべて保険で賄われるため、直接の出費にならないため保険会社に任せてしまうことが多いのですが、中には事故状況的に過失割合判定に納得出来ないとしてもめるケースもままあるようです。

ここでは、一般的にはよくわからない「過失割合」「過失相殺率」について簡潔に説明をしてみたいと思います。


過失割合をどう決めるのか

ほとんどのケースにおいて各保険会社の担当者は、過去の判例に基づいて提供されている、東京地裁民事交通訴訟研究会編集の「別冊判例タイムズ」に掲載されている事例をもとに算出することが一般的になっているといって差し支えないでしょう。現在は第38号を参照しています。
「判例タイムズ」に記載されていない事例の場合は、「判例集」を参考にして算出されるケースがほとんどといえます。

過去の判例をもとに多くの事例が紹介されており、ある意味では大変に便利といえます。よほどのことを除いて概ねの事故が態様によってパターン化されているため、とりあえずこの事故はこの事例にあたるものと判断し、そこから過失割合を決めていく形になっています。

そのこと自体に問題はないのですが、時としていとも簡単にこの事例にあたるため、過失割合は基本のこれと決められてしまうことがあると推測されることが問題といえます。

一般的にはよほどのことがない限り、当事者側としては保険会社の担当者が出てきて過失割合を主張した場合、そんなものか・・・と思ってしまうことは多いといえるでしょう。また、保険会社の担当者同士でのやりとりの場合、まさに事故パターンが掲載事例に合致するため現場確認をすることもなく、いとも簡単に決めてしまうこと考えられます。この場合、それ以上のやりとりについては強いて言うなら保険会社の担当者同士のせめぎあいということになるでしょう。

しかし、我々現場に携わる者にとって、それではまずいだろうと思われるケースがままあります。それはある意味では直接当事者、契約者のみなさんに影響することなのですから、自己負担が発生する場合や、人身事故に至ってしまったというような場合なら関係者は関心を持たずにはおれないことでしょう。

気になる事例で、よくあるケースを一つ取り上げてみましょう。いわゆる十字路交差点における出合い頭事故というよく見かけられるケースです。
業界的にいうと、信号機による交通整理の行なわれていない十字路交差点での事故となります。

十字路交差点における出合い頭事故


    

事例

    

事例

契約者側

事例
相手者側


このような現場での事故で、一方は一時停止をしてから発進したと主張。一方は交差点直前で相手方を確認したが、相手方には一時停止規制があることを知っていたため、そのまま直進し、感覚的には交差点を抜けようとしたところ後部に衝撃を感じたとして自身は無過失を主張というものでした。損傷部位についてはたしかに一時停止側は前部中央付近、一方は左側面リヤフェンダー後部あたりとなっていました。

当該道路は、道路全体の幅員が4m程度の狭いもので、当てられたとする側の車両運転者は、現場は上り勾配のうえ住宅地なので30km/h程度の速度であったとしています。年齢的な点を考慮してもおそらくそれは事実と推察されるものとなっており、この車両がクラウンであったことを考慮すると、まさに交差点を抜けようとしたところ当てられたというものでしょう。

この場合、道路幅がもっと広く大きな交差点であり交差点進入前に相手方を発見した場合、危険を感じて減速するなりの回避措置が取れるところ、そのまま進行したなどであれば、当てられたと主張する側にも過失を問うことは出来るでしょう。しかし、この現場状況ではこの事故を回避することは不可能といえるでしょう。

しかし、一時停止側の保険会社はなんとか相手の過失を取ることは出来ないか・・・?と考えたようですが、それは無茶というものでしょう。

これを現場確認もせずに、単純に判例タイムズにある事例にあてはめると、一時停止側に一時停止はなかったとして双方同程度の速度であれば、基本割合は一時停止側が80%、もう一方は20%となります。なんだかんだと理由付けをして一時停止側に10%の加算修正をしても90%対10%となってしまう可能性もあります。

現実問題としてこのような処理がされることがないとは言えず、さまざまな場面で現実に沿わない過失割合が決められていることがあると推測されます。

事故を起こした、事故に遭った当事者のみなさんは事故現場の状況についてと、運転状況についての出来るだけ詳しい記憶を残すようにしておくことが重要なポイントとなります。



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