変わらぬ保険営業現場の体質

つい先日、知人から受けた相談に際して、久し振りに生保営業現場の実態を垣間見たのでその実態をレポートする形で皆様に情報提供をしてみたいと思います。少なくとも現場最前線での大手生保会社の営業方法の姿に迫ることが出来るかと思います。

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あなたにとってこの保険は最高の保険です?


今回の相談依頼者は私の知人であり、またかつて生保の営業をしていた頃に契約をいただいていた契約者でもある。つまり現在の契約は契約当時私自身がプログラムをした商品である。したがってその内容からかいつまんで説明しなければならない。

現契約は9年前、1992年に契約されたものである。保険種類は外資系生保会社、A社の変額保険終身型300万円特約なし、払込60歳時までが1本、同じく変額保険有期型200万円特約なし、払込60歳時まで、保険期間終了65歳時が1本、医療保険日額5000円型保険期間70歳時まで、保険料払い込み期間60歳時までが1本の合計3本、保険料は合計月額9100円あまりである。

契約者は女性、契約当時は単身、両親と同居という状況であり、現在もまったく同じ状況にある。
契約にあたっての契約者の希望は、保険料負担を軽く、なおかつ将来に向けての貯蓄性があればよい、死亡保障について多くの金額を必要としない、入院費用対策は最低限の準備はしたいとのことであった。

この依頼を受けて作成したのが上記のプランであり、その後契約は継承されている。
なお、その後、上記の契約に加えて勤務先の団体割引の適用となる外資系A社の医療保険日額5000円分とガン保険の追加契約の相談を受け、その分を追加している。
したがって、現時点では同契約者には死亡時保障が合計700万円、入院保障は日額10000円がカバーされている状況にある。

後に追加した医療系保険は別にして、最初に契約しているプランにおいては、まず支払い保険料が保険料払込期間である60歳時まで変更がない。医療保障(入院保障)は保険期間満了が70歳時なので、70歳までは8日以上入院の場合はその初日から日額5000円が最高730日支払われるというものである。
死亡時保障と将来の資金の一部になればよいということで変額保険の終身型と有期型(わかりやすくいうと満期型)を組み合わせている。
このため、65歳時に有期型が終了し、その時点で運用実績に応じて満期保険金が受け取れる。算出基準からいえば200万円である。もちろん変額保険であることからその額に変動はある。
もう一方の終身型は60歳時の保険料払込終了以降は終身にわたって300万円の保障と変額保険金が追加される。また中途においてその必要性を感じなくなった場合は解約して現金価値に換えることが出来る。 というものである。 保険料は契約時の保険料が保険料払込終了時まで変わらないというプランになっている。

変額保険を選択したことについて、正直なところ、まさかバブル崩壊以後、これほど景気回復に支障をきたすということを考えていなかったという部分はある。
したがって、当初予想したより運用実績が思うようにのびていないという事実はあるものの、現状においてはそれでもそこそこの運用実績を残しているという状況にある。
これは同社のファンドマネージャーががんばっている結果ということになる。

私が変額保険の月払い方式を薦めた理由は、変額保険においてはその運用実績がもろに契約者に反映され、運用結果がまずければ簡単に言うとソンをする反面、運用実績がうまくいけばそのゲインを保険会社に吸収されることなくそのまま享受出来るという部分にある。
また一時払い方式と異なり、運用に際してはドルコスト平均法という考え方が基本として存在するため、株式に投入する分については株価が下がった時に多くの株を保有することによって、今度株価が上昇したときには結果的に多くのゲインを得ることが出来る可能性があるということを考慮したものである。
したがって、このプランは現在においても他の商品と比べてもなんら遜色なく、むしろ契約者にとっては契約者の条件を満たしたものとの判断をしているものである。
以上が現契約の概要である。

その契約者に対して、このたび国内大手S社のセールスから、『あなたの加入している保険について勉強をしたいので、保険証券のコピーを欲しい』と言われたとのことである。
国内大手証券会社の営業職にある契約者は、その仕事の関係から顧客の紹介を受けたりしている当該セールスからの依頼であり、断るわけにもいかず保険証券のコピーを渡したところ、しばらくしてから、この契約は変額保険であるし、入院についても70歳までの保障しかないのでダメだ、ついてはこのようなプランがあるので検討して次回にお会いする時には印鑑を持って来て欲しいと言われたそうである。

提示されたプラン(提案書)というのは流行の介護保障を組み合わせたもので、月額12000円あまりの保険料、さらにファンドとしての積み立てをするならさらに月額2000円を追加すると将来の資金つくりの手助けになるというものである。
つまり合計保険料は月額14000円余りということになる。
メインは介護保障の年金額270万円の10回保障および死亡保障1000万円の定期保険特約である。これだけで保険料のうち9000円あまりを占めている。それぞれ10年の自動更新型である。加えて入院保障日額5000円、成人病特約等が80歳満期のものが付加され、その特約も10年自動更新型となっている。

これは保障重点型の保険で、しかも10年ごとに保険料が上昇するのではないか?と反論したところ、保険料負担が厳しいのであれば保険料はかわらないように調整すればよいという返答だったという。自動更新である以上、10年後の保険料はその年齢によって計算されるため、保険料を現在とかわらないようにするには保障額を下げるしかない。
そのセールスは、現在の契約は変額保険であり、いまどき変額保険を続けていること自体がおかしい、また入院保障も70歳以降が本当に必要であり、70歳で終わってしまうのでは意味がない。今回のプランは最高に良い条件のものなのでぜひ契約するようにと勧めたそうである。
また、変額保険については、おそらく現状では解約返戻金は2本で合計30万円にも満たないであろうから早くやめた方が賢い、さらに現在の契約を勧めた人は変額保険を勧めたことを後悔しているだろう。もっと早くに解約をすすめるのが常識的な保険営業マンだと言ったそうである。
この相談を受けた時に、私はその次元の低さに笑う以外することがないという状況であった。


  このケースの問題点

契約者は現在37歳である。現在、保険契約をすれば契約年齢は6捨7入の基準から契約年齢は38歳になる。基本的に主契約の払込は65歳で終了となっていることから、介護関連および定期保険特約においてもあと2回(48歳時および58歳時)の自動更新がなされる。入院関係については80歳満期ということなのでもっと保険料は上昇するであろう。 では一体、保険料の総払込金額はいくらになるのか?ファンドして利用できる部分は月額2,000円の保険料を積み立て、1.5%の保証をつけたもので65歳時に74万円あまりということである。

このプランの一体どこがこの契約者にとって有利なのか、まったく意味がわからない。

しかも、このようなプランを出すにあたって、この契約者に対して一体どういう保障が欲しいのか、あるいは保険に対して何を望んでいるのか、保険料の予算についてなどは一切聞いていないということである。 単に保険証券のコピーを入手して、それに対応するプランをコンピューターから出してきただけのこととしか考えられない。

まず第一にこの契約者にとって1000万円の定期保険特約はなんなのか?ということがある。契約者は死亡保障に多くの金額を望んでいないのである。それに対して10年自動更新型の定期保険特約1000万円はなんの意味をもつのか?はっきり言って意味のないものである。
介護保障については、介護状態になった場合に支払われるもので必要である。先になってそのような状態になってからでは加入することが出来ないので今のうちに加入することを勧めるとのことらしい。

介護についてのリスクを契約者自身が感じてこそ初めて加入を考えるものであろう。たしかに保険については病気になってから加入することは難しいことは事実である。だからと言って、そのような勧め方をするのは単に介護を前面に出して脅しているのと同じである。
医療保障についてもまったく同じである。70歳以降にこそ必要という論理がわからぬではないが、なぜ、現在より不利になる契約をわざわざ今しなければならないのか、まったく説得力に欠けるセールスといわざるを得ない。

しかも、自動更新によって保険料が上がるのを防ぐためには、更新時に保険料の調整をすれば負担は変わらないと説明したとするが、それは保障額で調整するという意味であろう。保険料自体が上昇するのを保障額を下げて帳尻をあわすということであり、それならなんのために保険金額を設定しているのか意味をなさなくなる。

年齢がいくにしたがって、病気の確率は高くなるのである。それを保障額を下げるというのでは保険そのものの意味がないことになる。明らかに現在の契約を取るための詭弁としか受け取れない。
年齢あるいは生活環境の変化に応じて、リスクを感じたなら、そのリスクを回避するために保険商品を選択するのである。場合によっては保険に頼らず他の商品でも良い場合もある。つまり必要を感じたらその保障を買うというのが基本的考えである。

S社をはじめとして、大手D社においても介護を組み合わせた新商品がヒットしていると聞く、たしかに商品そのものについて悪いものとは思わない。これは当サイトにおいて他のページにも書いている通りである。しかし、その商品を契約者に納得がいく説明をして、契約者の理解を得た上で販売するのがまっとうなセールスであろう。

その販売手法が、従来の生保販売パターンとまったく同じようなものであることを再認識させられ、これでは問題があるのではないか。というのが今回のケースである。
断っておくが、すべてのセールスがそのようなセールスを展開しているものではないと考えている。しかし、今回のセールス担当者はその支社において重要なポストに居る人物らしいと聞いて愕然としたのである。

おそらく同様のケースが全国的に多く行われているのであろうことが容易に想像され、一般に契約者はそれほど保険に対して詳しい知識を持ち合わせていないのが実情である。

全国のまっとうな保険営業を行っておられる人達のスタンスは本当の意味での契約者のニーズに対応するコンサルティングである。
またそれは本当に契約者の皆さんが望んでおられることであろう。

最後に変額保険というだけで、不利な保険としたくだんの営業マンにはもっと勉強されることを望むところである。単なる先入観にとらわれて説得力のないセールスを展開すると結果的に契約者に迷惑をかけることとなることを考慮されたい。
ちなみに今回テーマに上った変額保険については、月払い方式の変額保険であり、うちわけとしてその保険料の約70%程度が特別勘定で運用されるものである。つまり残りの30%は保障のための保険料である。

したがって、今回のケースでいえば2本合計でおおよそ月額5000円弱の金額が運用に回るというものである。わかりやすく月額5000円として、契約後9年を経過しているので運用元金は約54万円である。現在の解約返戻金は2本で約45万円程度ということであるから、積み立て元金を割り込んでいることは事実であるが極端に大損をしているにはあたらない。

また、変額保険を短期的な商品としてとらえるという考え方には問題があり、むしろ長期の運用として考えるのが順当であろう。今後の経済環境の変化によって、簡単にいえば株価の上昇等の要因によって十分に貯蓄性のある商品となる可能性の高いものである。
バブル時期に一時払いで、あるいは金融機関(銀行)が一時払い保険料を貸し付けるというおかしな営業で問題になった商品と同じものではないという認識くらいは持ち合わせてもらいたいものである。

なお、これらのことについて、当該契約者は証券会社に勤務する人であることからその仕組みを理解されていることについては言うまでもない。
今回のテーマについては、おそらく全国的に同様のケースがあるものと推測されます。このような問題は大きな問題であり、各営業に携わっておられる方、あるいは契約者の皆さんからの情報提供を望みます。


(2001年5月27日)



■2016年12月18日追記

この記事を読まれた方は、今から15年も前の状況であり現在は保険営業の現場も変わりコンピュータによる企画書も、もっと優れたものを出すのではないか?と思われるかも知れません。
しかし、保険営業をする側の人間がよほど契約者(お客様)の立場になって、詳しい状況や考え方、保険に対してなにを望むのかを把握しておかないと良いプランを出すことは出来ません。
そのようなスタンスでの保険営業に携わる人たちが少ないのは今も変わっていないのが実情です。



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