これでは契約者から苦情を受けても仕方がない!

事故調査業務の中で大手損害保険会社の損害サービス課(損害調査・査定)課長との間でトラブルになった経験を基に保険会社のあり方を問う内容のページです。

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これでは契約者から苦情を受けても仕方がない!



当ページについて

私の本業は保険事故調査という仕事ですので、案件によっては保険会社の査定(一般的な意味で査定と称しており、実際は各保険会社によって呼称は異なっている)担当者と話し合いをすることがあります。今回は、私の対応をめぐって保険会社から私の勤務する調査会社へのクレームという形に発展することになったものですが、契約者の方にとってはあまりにひどい内容と判断されるため記載することとしたものです。
※この記事は調査会社に勤務していた頃のものですので、おそらく2004年当時のものと思われます。

国内大手損保T社からの依頼で、個人賠償責任保険事故の調査依頼を受けた。個人賠償という保険は、個人がプライベートな生活において、自らの不注意から第三者に損害を与えることとなってしまった時に、法律上、負担すべき損害賠償額を支払うというものである。このように書くと難しいようであるが、早い話が、過失によって他人に迷惑をかけ(損害を与え)、結果として弁償をしなければならなくなったときに法律上弁償すべき金額を払ってくれるという役に立つ保険である。

世帯主が契約すると、同居親族はもちろん、別居の未婚の子(たとえば大学に通うため遠隔地にアパートを借りて住んでいる子など)が被保険者に含まれる。ここでの注意点は同一家計であることが条件となるため、独立して生計を営んでいる者は同居親族であっても被保険者には含まれない。
今回の事故は小学校低学年の子供が、自宅近隣のモータープールで友人と遊んでいるうちに、駐車場に駐車されていた車両の上に乗ったことによって自動車に損傷を与えたとし、相手方から損害賠償請求をおこされたというものであった。

事故そのものは、結論としてこの子供が実際に車両に損傷を与えたものであるかについての特定が出来ないうえに、車両の損傷箇所が整合しないことから、契約者にとっては損害賠償に応じる必要はないであろうとのことになり、そのことに特に問題はなかった。
では問題は何か?というと、契約者のお宅を訪問した時に契約者から今後どのように対処すればよいのか?との質問を受けた。これは調査業務に関連してよく聞かれることなのである。

調査会社の立場としては、「それは保険会社にお聞きください。我々は事故の事実確認が仕事であって、保険金の支払いに関連する事柄について言及する立場にありませんのでお答え出来ません」というのがセオリーである。
実際に交通事故などの過失割合について意見を述べたりしたことによって保険会社からのクレームを受けるというようなこともあったそうであるが、それは当然で、保険金の支払いについてコメントをすることはタブーなのである。実際のところは我々の調査結果とともに提出する参考所見が何の役にも立たないということもあり、それは保険金を支払う保険会社の勝手なのである。

しかし、今回は契約者としても自分の子供が犯人呼ばわりされて、また金額も大きな賠償を請求されるかも知れないとの不安を抱えていた。特に賠償事故にからんでは一般的にあまりなじみがないということから、どう対処すればよいのかわからないということで保険会社を頼るというのは当然のことである。

わからないまま、示談あるいは非を認めて賠償に応じたものの、保険会社からは結果として法律上の賠償責任は発生しないので保険金の支払いは出来ないとか、法律上の賠償金額はこれだけですから保険としてはこの金額しか支払うことは出来ませんと言われたりして自腹を切るというケースもままあるのである。
そのようなことから、私はその契約者に対して「相手方から要求があれば、保険会社に相談されることとなりますが、対応に困られるようであれば、自分はこのような保険に加入しており、保険会社に報告をしているが内容がよくわからない、ついては保険会社に聞いてもらいたい、と言って逃げられたらどうですか?」と答えたのである。


この発言をめぐって早速保険会社からクレームが来た。保険会社の査定担当者(厳密には中間管理職にある人物)によると「あなたのアドバイスは契約者に保険会社が示談代行をするものとの認識を与えるものであり、当社としては示談代行を出来るものではないことから契約者に訂正をしてもらいたい」というものである。

個人賠償責任保険が自動車保険のように示談代行サービスを行っていない商品であることは百も承知している。実はこれに先立って当該契約を扱っている代理店に連絡をするようにとの指示があったので、連絡をしたところ、「あんたが客にそのような事を言ったから、客は保険会社が示談をしてくれると解釈している。客は窓口が自分であるころから私のところに言ってくるが、そんなことは代理店としては出来ないし困っている。それは査定の仕事になるので査定に言う」というものであった。

もちろん代理店に示談交渉をせよなどと言っているものではないし法律的にも出来ない。しかし、代理店なら自分のお客様である契約者が困っているのだから適切なアドバイスをしてあげるべきであろう。そこにはいかにもそんな手間なことになったら困る、それは査定のやることだ。という意思が見え見えなのである。

くだんの査定担当者に対し、私は契約者に対して保険会社が示談代行をするとは言っていない。またこの保険が保険会社の示談代行の対象になっていないことは承知している。今回の件は、わけのわからない契約者が間に入って困っているのだから保険会社として適切なアドバイスなり相談をするのが当然であろうことから、そのくらいの対応はあってしかるべきことでないか?と問い返したところ、「契約者に対して、相手方から直接当社に聞くように勧めた発言そのものを問題視しているのであり、それが示談代行を示唆することとなっているのだ」の一点張りでとりつくしまがない。

では契約者にとっては、せっかくこのような場合に備えて当該契約を締結しているにもかかわらず、この事態を解決するのはどうしたらよいのか?と聞くと弁護士なり地域の法律相談等があるだろうという回答であった。

保険会社による示談交渉サービスが付いていない限り、契約者が相手方と交渉をして、それから保険会社に対して保険金請求を起こすという形になる。これはある意味正しいことではあるが、実際の事故解決にあたっては、保険会社がサポートし適正な賠償額を出すというのが通常である。

なぜなら、そうすることによって契約者は不必要な賠償金を支払う必要はなく、また保険会社も適正な保険金を支払うことになるからである。契約者が対処できない場合に相手方から保険会社に問い合わせることのどこが示談代行になるのか意味がわからない。

仮に相手方から保険会社に連絡があったとして、この保険は当社で直接対応することは出来ないので契約者さんに直接言ってくれとして、契約者にアドバイスをしてあげればよいではないか!

査定の担当者なら、それなりに対応すればよいのである。少なくとも契約者よりは法律的な知識もあろうし、保険についての知識も持ち合わせているはずだ。相手方からの要求を確認し、それに対して契約者にこういう風に対処すればよいとアドバイスをしてあげれば良いだけのことであって何も示談交渉をするわけではない。あくまでも事故解決に向けてのアドバイスであろう。

ところが、前述のように「契約者に対して、相手方から直接当社に聞くように勧めた発言そのものを問題視しているのであり、それが示談代行を示唆することとなっているのだ」の繰り返しで早い話が論点がずれている。

この回答にはさすがに呆れて、「それでは契約者は一体なんのために契約をしているのかわからない。適切なアドバイスなり相談に乗るというのが貴方達の立場ではないのか?」と問うたところ、相談には乗る、あくまでも契約者に対してであり、解決に向けてのアドバイスも行なう。しかしそれは代理店が中心になってやることであって、代理店の裁量にある程度は任す。代理店が判断できないことであれば当方で対処するなどとわけのわからない対応になってきた。

代理店はそんなことを出来る立場にないと言ってるじゃないか!契約者が相手方からの要求に困った時に、契約者自身が対応することによって再度、保険会社に問い合わせた後に相手方に回答し、その対応をまた保険会社に返すという時間的なロスも生じるし、わかりにくい部分もあるだろうから、その時に相手方から直接保険会社に問い合わせても構わないのではないか、それはなにも示談代行にあたらないであろうと思うと言うと、相手方から直接聞かれても回答は出来ないので契約者に聞いてくれと返すしかないと答える。

そんなバカな対応があるか、子供の使いじゃあるまいし、保険金支払いの権限を持つ査定の人間がその程度のことしか出来ない保険会社なのかということになる。それじゃ、契約者は一体どうすればよいということになるのか?と聞くと
、 それは契約者の方で解決してもらう問題であり、あくまでも当社が示談に関与するものではないのです。と来る。

そんなことはわかっている。単に契約者さんにアドバイスをしてあげるのが本筋だろうと言っても堂々巡りで話にならない。

とにかく今回あなたが契約者に対して言ったことは保険会社が示談代行をすると連想させるものであり、またそのように解釈するように誘導したのだから契約者に対して訂正して欲しいと、結局はここに落ち着く。

いつまで経っても堂堂巡りなのでアホらしくなってきて、結局は、確かに契約者に対して誤解を招くような表現をしたことに違いないので、この保険に関しては保険会社が示談代行をするものではないという点について、契約者には伝えるが、解決にあたっては適切なアドバイスなり相談に乗ることは保険会社の義務と思うとして電話を切ったところ、今度は会社に連絡があって、あの調査員は誤解をしているので問題があり、会社として対処されたいとの申し入れがあったそうだ。

調査会社にとっては保険会社はクライアントであり、お客様であることからそれなりに謝罪するとかを迫られるのであろうが、こんなアホな話はない。
だいたい、契約者が保険会社に対して不満を持つのは事故発生の際における保険会社の対応に対してである。過去においても調査に赴いて契約者の口から何度、こんな保険会社とは思わなかった、これを機会に契約先を替えようと思うという言葉を聞いたことか。

保険契約というものは、何かが起こった時にはじめて役に立つものであって、その時に契約者にとって役に立たなかったら何の意味もないのである。そこに契約者の誤解もあるだろうが、多くは保険会社(代理店も含めて)の説明不足が原因となっている。
そもそも査定という仕事を担当する社員には、契約者から保険料をいただいているという感覚がないのではないか?と思わせられる時がある。保険金を支払うという立場にあるため、ともすれば払ってやるというような高圧的な受け答えをする担当者も存在するのである。

ことわっておくが、まともな査定マンという人も多くおられる。しかし、まともな対応をするというのが当たり前なのである。どこか勘違いしているような査定マンはそれこそ問題である。
入社そこそこの新入社員ならともかく、何年も査定という仕事に携わっていながら満足な知識もないという社員はいくらでも居る。そんな担当者にあたった契約者は大変な迷惑を蒙ることになる。

大手損保会社などというとプライドもあるのだろうが、保険会社というのは結局サービス業であって、契約者に対して事故発生の際にいかに迅速に事故解決と保険金支払いを早くするかというサービスが出来るかというのがポイントだ。

先の担当者は、査定とか損害調査という言葉を言うと、当セクションは損害サービス部と称しますと言った。まさにお笑いで、どこにサービス精神があるのだろう。役所だって最近はサービスという意味を認識しているではないか。

優秀な代理店なり、適切な対応が出来る保険会社に契約者がシフトしていくのは当然である。契約者は保険料というフィーを支払っているのであり、それに見合うサービスが受けられなかったら別の保険会社に移行するのは当たり前である。今後、契約者の見る目が厳しくなっていくにしたがってネームバリューだけでは契約の維持が困難になっていくことは必至であり、保険会社は営業面に力を入れるだけでなく査定部門に優秀な人材を配置しないことには、立ち行かなくなるだろう。
そういった意味では、この業界はこの点でも過渡期というべきかも知れない。


  追記

この件からすでに10年以上を経過し、現在、私は独立して調査業を自営していることから、保険会社損害サービスセンターの担当者や課長、センター長などと直接面談し、案件処理についての打合せを行なっている。
保険会社は顧客サービス満足度を上げるために、損害サービスセンターでも契約者に対してきちんと進捗報告をしたりアドバイスに応じるようにする方向性が向上している。
しかし、中には相変わらずステレオタイプで、型にはまった対応しかしない担当者も居る。
事故に直面した契約者は困っているわけで、そのために契約している保険が機能しなければなんのために保険契約をしているのかわからない。出来ないことは出来ないのであるから、それはそれで伝えるしかないが、顧客サービスを考えるなら適切なアドバイスをするのは当然というものであろう。



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