火災保険のポイント

火災保険というものも大抵のご家庭で契約されておられる保険商品ですが、生命保険と同様にその内容については意外に知られていない商品と思います。ここでは火災保険を取り上げて簡単にわかりやすいポイントを解説しています。

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火災保険のポイント


昔はよく、火災保険なんて家が燃えても柱が1本残っていたために全焼扱いにならずに保険金が払ってもらえないなどという話を聞いたものです。

実際にそのようなバカなことは無いのですが、こういった不信感を契約者に持たれるという部分に問題があります。先の件では、保険金額が適正なものでなく一部保険になっていたから満足に保険金が支払えないということが原因と思われます。

経験上、言えることは一旦そのように不信感を持ってしまわれた契約者の人に説明して理解してもらうことは大変なことです。また多くの場合は保険料が高くなってしまうので尚更大変ということになってしまいます。

基本的な説明をすると、

まず前述の「一部保険」ってなに?という方が多いと思います、一部保険というのは文字通り一部しか保険がかかっていない状態のことです。簡単に原則論の説明すると、例えば1,500万円の時価評価額のある建物に1,000万円の火災保険契約がなされていた場合、3分の2しか保険がかかっていない状態になりますね。 この状態を一部保険というのです。したがって、全焼となった場合は保険金は1,000万円しか支払われません。(ここでは残存物取り片付け費用等の費用については除いて説明しています)これでは新しく家を新築するのにまた資金を準備しなければならないのは当然ということになります。
この点については、1,500万円の値打ちがあるものに対して2/3にあたる1,000万円しか保険を掛けていなかったわけですから、1,000万円しか保険金が支払われなくても契約者さんは納得されます。

しかし、問題のなるのは全焼に至らない場合であって、例えばボヤなどで先の建物に150万円程度の損害が出た場合もそれに比例して100万円しか保険金は支払えませんということになります。
保険の考え方からいうと実際の評価額に対して3分の2しか保険がかかっていないのであるから、例えばボヤなどで150万円程度の損害が出た場合もそれに比例して100万円しか保険金は支払えませんということになります。
この考え方を理解していただくのに難儀すると保険関係者は誰もが言うのが実情で、一般的には1,000万円の保険を掛けていて、損害がたったの150万円なのにどうして全額払ってくれない!と苦情になってしまうわけですね。

この状態を「比例てん補」といいますが、この説明を代理店の方から聞かれていない契約者はずいぶん多くおられます。したがって実際にこのような事態が発生するともめてしまうということになってしまいます。

上の例は、火災保険の基本的な考え方を説明したものです。多くの皆さんが契約対象となっている住宅に関しては時価の80%まで保険がかかっていれば、一部損害でも実際の損害額を支払うという「80%実損払い方式」をとっている契約が多いと思います。

しかし、基本的な考え方は同じですので、契約の際は代理店からよく話を聞いて確認しておく必要があるでしょう。

建物の評価については、各保険会社とも簡易評価ガイドなどを用いて評価しているケースが多いと思います。市町村等で固定資産税の課税対象にしている評価額とはまったく違いますのでご注意下さい。 一般的には建物の構造、および材質から現時点での再新築価格を求めてそこから経年減価を行なったものが時価評価額ということになります。 瓦にしても普通の日本瓦と、三州瓦、あるいはカラーベストを用いた建物、柱に高級な柱を用いた建物等では建築単価が異なるのは当然のことですね。「一般的にこんなもんですよ」などといって契約するなどはもってのほかで、契約時にきちんとした評価を行なうのが大切なことです。

最近では、価額協定保険特約という特約を付けた新価ベースの契約が多いものと思われます。これは再調達価格(新価)を基準に保険を掛けるというものです。

考え方としては、もし建物が全焼しても保険金でまったく同じ建物を建てることが出来るというものです。保険会社の料率体系分類として、「住宅物件」「一般物件」「工場部件」等に分かれています。いわゆる住宅にのみ使用されている建物については「住宅物件」ということになり、保険種類も多くは幅広い補償を付けた総合型の契約が多いものと思われます。

いわゆる店舗と住宅を兼ねた建物の場合は「一般物件」となります。この場合も「店舗総合保険」という契約形態が多いものと思います。しかし、それらの内容を把握しておられる契約者の皆さんは少数ではないかと思います。




火災保険というとすぐに「建物」という点に意識がいきがちですが、実は「家財」に対しても十分な備えが必要といえます。「家財」というと家具類であるとか大型電化製品を思い浮かべて、うちはそれほど「家財」なんてないからいいや、なんて考えていると大変なことになります。

ごく一般的なご家庭でも「家財」は予想外に大きな評価額になってしまうものです。 それは、お住まいになっておられる「建物」の中にある造作以外の全ての物が家財ということになるからです。先の家具類はもちろんですが、その家具に収納されているもの全て、家の中にあるアクセサリー類からなにから全部が家財ということになります。

実際に罹災した場合には被害届けを提出することになりますが、その時に一覧表に順番に記載していって初めて『うちにはこんなに物があったのか!』と思われる方は少なくありません。

皆さんも一度おひまな時に家財の一覧表を作ってみられたら驚かれると思います。例えばステレオなどの音響装置に凝っておられるとか、家具に凝っておられるとかブランド物の商品を多く持っておられるとかの場合は必ず大きな金額になってしまいます。 加えて高額な宝飾品等を多く持っておられる方はさらに注意が必要です。

火災保険では、1点30万円以上の宝石・書画・骨董などの物については契約時に保険証券にそれを記載しておくようになっています。これを「明記物件」といいますが、これらは実際に火災が発生した時に保険会社ともめることがないようにとの発想で設けられているものです。

30万円以下のものについては、記載する必要はないのですが、平均して1点10万円程度の宝飾品等でも合計で30点くらいあったら、それだけでも300万円になってしまいます。 家財についても、建物と同じように「比例てん補」という考え方は存在しますので注意が必要ということです。家財については新価ベースでかける方法はありません。

先に、おひまな時に一覧表などを作成されたら…と書きましたが、これには意味があります。というのは、住宅総合保険などの場合は、火災のみならず家財の盗難もカバー出来るようになっています。いわゆる泥棒というやつですね。 この被害が意外に多く発生しているのです。私の本業は保険請求事故の調査というものですが、この種の調査依頼も結構多くあるのです。

火災と違って盗難の場合、家具類や耐久消費財を持って行く泥棒はいませんから、現金、宝石類、ブランド物、時計などといったものが被害に遭います。いざ保険金請求のために書き出してみると、あれもあったこれもあったというようなことになって、しかも何時頃購入したものか、購入金額もわからないというケースがものすごく多いのです。

これでは、損害額の決定に多大な時間を要し、結局保険金支払いに時間がかかってしまうということになってしまいます。ですから数年に1回くらいは、一覧表のようなものを作成されて、所有されているものの整理をされておかれるとなにかと便利ということになります。また 購入された時期、購入先等の記録も残されておかれると良いと思います。

新価ベースの火災保険(家財)を契約していた方が、盗難被害に遭ったものの、購入した時の資料をきちんと管理していたことによって、結果的には被害額以上の保険金を受け取ることが出来た例もあります。

以上は火災保険における重要な項目である「比例てん補」と「明記物件」についての説明となっていますが、火災保険というものはその発生率が低いこともあって、意外に認識の低いものとなっているようです。しかし、実際に被害に遭うと大きなダメージを受けるということになってしまいます。せっかく契約している保険で満足な補償を受けることが出来なかったら、それこそ保険の意味が無いということになりかねません。

その意味でも一度ご家庭の火災保険契約について確認する必要はあるでしょう。

逆に火災保険の場合は余分に保険がかかっていたからといって、実際に事故が発生した時に余分に保険金が支払われるものではありません。いわゆる焼け太りを防ぐという意味からそういう制度になっているのです。

つまり保険上1500万円の評価額の建物に3000万円の契約があったとしても、実際に全焼になった場合、3000万円が支払われることはないということですね。

つまり1500万円分の余分な保険契約はまったく意味のないものということになります。そんなことはないだろう、とおっしゃる方が多いかと思いますが意外に余分な保険契約は存在するのです。

例えば、住宅ローンを組んだ時に質権設定付き火災保険契約を結び、保険料を一括して支払ったことを忘れてしまってとか、あるいはその事を知らなくて毎年火災保険契約をしている方がおられます。

また逆に住宅ローン関連で保険に加入したので必要がないと言って、家財に対しての契約をしていなくて火災に遭ってしまった方もおられます。

建物を増築したのにもかかわらず、従前の契約のままにしておいて結果的に一部保険になってしまったというケースもあります。扱っておられる代理店さんがしっかり管理しておられたなら発生しないような事でも、移管された契約等で契約者を訪問することなく何年間も毎年満期通知のハガキだけ送付して保険料は振込みという事がよくあります。 このような場合は、正確な情報が伝わりにくいことから注意が必要です。

また積立式の火災保険を契約されておられる方の中には、それは保険ではなく貯蓄と解釈されているというケースもあります。 いずれにせよ、火災保険を重複して契約しても保険料の無駄ということになりますし、逆に適正に契約されていなかった場合は、事故が発生した場合に満足な補償を得る事が出来ないということになります。

一般の方が火災保険について、多くの知識をお持ちであるとは考えられませんので結局、代理店さんに正確な情報を伝えてきちんとした契約形態にするという他ありません。

賃貸住宅にお住まいの方の火災保険についてですが、賃貸住宅の場合はよほどの場合を除いて建物に火災保険をかけることはないでしょう。建物所有者である家主さんが契約しているケースがほとんどです。つまり居住者の皆さんは家財についてのみ契約されるという事がほとんどです。

火災事故については、民法上の「失火に関する法律」によって失火により他人の財物に損害を与えても損害賠償の責めは負わないとされています。これは失火によって大火になったとしてもそんな賠償は出来ないという発想から生まれたものでしょう。 したがって類焼家屋に対しての損害賠償義務はないということになります。

しかし、家主に対しては自分が管理する財物に損害を与えたということになり、家主から損害賠償を請求される可能性があります。 このような場合に対処するために、住宅総合保険、店舗総合保険などには「借家人賠償責任担保特約」というものが用意されています。

賠償保険特約といえば、火災保険には大概「個人賠償責任保険特約」が付けられてることが多い状況といえます。
この個人賠償責任保険特約については別項で書きますが、ある意味、今の世の中では必須といえるものですので、必ず付加しておかれると良いと思います。例えば自転車による事故で他人に損害を与えた場合などに役に立ちます。

また、普通の火災保険では、地震、噴火、これらによる津波を原因とする損害については支払われないことになっています。阪神大震災の時も発生した火災原因が地震によるものかどうかで訴訟になったケースがありましたが、このような場合に対応するために地震保険というものが販売されています。

これらの他、様々な支払いに関しての説明がなされているパンフレットには、よく目を通され、代理店に詳しい説明を聞くことが重要なポイントになります。



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