事故調査現場からの保険関連情報

保険事故調査の現場最前線から見た保険にまつわる記事を掲載しています。

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調査業務の観点から見た世相


前回の終わりに、せち辛いというか不景気が云々などと書いたが、昨年あたりから我々の仕事においても保険会社からの依頼案件に変化が生じて来ているなあと感じる。明らかにモラルリスク(不正請求)がらみの案件が増加しているのである。

景気の良い時代なら「まあ、いいか」で済ませることが出来たところが、そういうわけにいかないというところであろう。保険会社の側もかつてならそこまで神経質にならなかったところ、現在では保険金支払いに関して非常にシビアになってきているという傾向がある。

もっとも、中にはわざわざ外部に調査を発注しなくても関係者に電話聴取すればいいじゃないか?と思われるような案件が出てくるのに笑えることがあるが、そんなことを言っていると商売に差し支えるのであるが、そんなのは調査料の無駄使いである。まともな調査内容に対してもっと調査料を支払ってもらえるほうがありがたい。

偽装事故や保険金詐欺というものについては、以前にも述べたようにコストパフォーマンスの高い仕事(?)であるから、今後も無くなることは無いであろうし、ますます巧妙になる可能性もある。コストパフォーマンスが高いというのは、コスト(支払い保険料)に対して受け取る保険金が大きく効率が良いからである。多少の知識があって頭の回る者なら考えつくことといえる。

その道の関係者というのは、約款の隅々まで読んで研究しているのではないか?と思わせられる時がある。巧妙に仕組まれた場合は簡単に見破ることなど出来ない。また、見破ったとしても証拠がなければどうすることも出来ない。保険会社としては支払わざるを得ないということになる。

自動車の衝突事故による偽装などは、衝突した自動車という物的証拠があるので最終的には工学鑑定をかけるとか、整合性を追求していけば事故と損傷の整合有無で解決出来るケースが多い。

盗難の場合は、盗難被害に遭ったとする被保険物件が実際にあったのかどうか?また本当に盗難に遭ったのかどうかということから検証しなくてはならず、場合によってはその特定に困難を極める場合がる。このような時に警察はまったくアテにならない。

被害者からの申告のみで受理をするため、逆に警察の受理を利用するというやからも多いのである。もっともこのようなプロのような連中は以前から存在しており、その数が急増したとは思えない。

増加しているのは、意図的な損害の拡大であるとか、偽装、飲酒事故による虚偽申告、アフロスなどである。

飲酒については、今年の6月から道路交通法が改正され、酒気帯び運転の基準数値が少なくなったことから、今後は調査もやりやすくなるものと考えている。

アフロスなどは、景気が良かったら保険料の支払いなど何の問題もなかったであろうに、保険料の支払いに支障をきたしてしまったため事故に至り、それを隠すために…というケースが見られる。これらはある意味では気の毒ともいえるが仕方のないことである。

面白いのは、週刊誌やスポーツ新聞などの記事にされているテレクラや伝言ダイヤルなどの需要が本当にあるのかと疑問をもっていたが、これが意外に多く利用されていると推測されることだ。ここ1~2年問題視されている「出会い系サイト」等については、そんな案件に当たったことがないのでわからないが今後出てくるかも知れない。不倫や浮気という関連も多いことから実態としてはけっこう多く存在するものと思われる。

保険金請求=カネということになるのであるが、本来の目的から外れて保険という制度を利用し、不正に保険金を受け取ろうとする者が増加するという傾向というのはやはりそれだけ世の中が荒れているということなのだろう。


(2002年9月8日)



 追記

この項で書いている記事はずいぶん以前のものですので、現在とは状況が異なっている場合もあります。
しかし基本的にはなにも変わっていないともいえますので、そのまま掲載しています。

2016年12月19日



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