飲酒事故調査
調査業務の仕事の中で、一番やっかいなのが「飲酒調査」というものである。深夜に発生、警察不届、あるいは届出日が翌日もしくは2~3日後、単独事故、事故場所不特定等、このような事故の場合は大抵保険会社から調査依頼が来る。
多くは車両保険の請求である。事故によって負傷した場合は、搭乗者傷害保険、自損事故保険といった請求にもなることがある。これらはいずれも酒に酔って運転していた場合には、保険金を支払ってもらえないことになる。
したがって契約者の方もなんとか飲酒の事実を隠そうとする。保険会社はなんとか飲酒の事実をあばこうとする。実際に飲酒は無かったというケースでも保険会社は一応疑ってかかるので調査を入れる。この間に立つのが我々調査員ということになるのであるが、この作業は大変である。
被調査人と面談して、事故状況、事故発生場所、事故前後の行動、立寄り先、等を聞くことから始まって次にそれらの検証、裏付け調査となる。
「事故状況?発生場所?そんなもんよう覚えてないわ」等と答えられると困ったことである。地図を持ち出して、どこからどのコースを走行されましたか?等と聞いて、実際にそのコースを実走してみることとなる。山の中などになると、いたるところに事故の痕跡があるので一体どれがその事故のものかわからない。
このような時に約に立つのが、保険会社の技術アジャスターの資料である。損傷個所の損傷程度、入力角度その他の情報をもらって、整合するかどうか検討する。
実際の発生場所を偽って事故報告するというケースがあるからで、そのような場合は大抵発生場所すら覚えていないか、あるいは意図的に隠そうとしていることが多い。
なんとか事故場所が特定できたとして(実際に特定出来ないこともある)次は、事故前後の行動、立寄り先の確認になる。
ところがこれはプライバシーに関る事が多く、すんなり答えてもらえる事が少ない。やましいことが無い人だとすらすら答えられるのではないかというと、それがそうでもない。どうしてそんなことをいちいち説明しなければならないのかと来る。
事情を説明して、飲んでいなければ飲んでいないことを証明しなければ、保険金を支払うことは出来ないということを理解してもらうまでが大変である。
しかし、人には他人に言えないことの一つや二つあっても不思議はないものであるから、守秘義務の説明をしてなんとか教えてもらうこととなる。このような場合、不倫とかがからんでいることがあるので苦労するはめになる。
偽装工作が完全に出来ている奴は妙にすらすら答える。これなどはちょっとした話のずれを突いていくしかないが、なかなか困難である。
結局はうまく仕組まれるとわからないということになるが、素人がやる場合は、どこかに抜けているところがあってバレてしまうことがある。そうなると今度は開き直って、飲酒したことは事実だが、酒に酔って正常な運転が出来ない状態ではなかった。と反論する。
こうなるとお手上げで、結局裁判沙汰になることもある。「酒に酔って正常な運転ができないおそれがある状態で運転していた場合」等という表現は、結局いらぬトラブルを招く元であるから酒を飲んで運転した場合というように改訂したらもっとすっきりすると思うのだが・・・。
とにかく、このように飲酒調査というものは難儀するし、また契約者(運転者)の方にとっても鬱陶しいこととなるので飲酒運転だけは気をつけていただきたいと思う。
追記
この項で書いている記事はずいぶん以前のものですので、現在とは状況が異なっている場合もあります。
しかし基本的にはなにも変わっていないともいえますので、そのまま掲載しています。
2016年12月19日
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