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当サイト立ち上げ時以降、少しずつ書いていたコラムのバックナンバーです。

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 生保予定利率引下げ問題について


ここのところ、生命保険会社の破綻前に予定利率を引下げ可能にする問題についての報道が続いています。以前に書きましたように、一時先送りになったのは選挙の問題等もあったからで、一段落したら必ず持ち上がると思っていましたがいよいよ本格的になってきたようです。

というより、政府の中ではすでに大筋で決まっていることをいまさらになってあれやこれやと論議しているあのように見せかけているようにしか思えませんが…。

元来、逆ザヤ問題で困っているところに、ここのところの株価の低下による含み資産の減少から生保の体力が落ちていることを受け、生命保険保険会社を救済しようという発想であることは間違いありません。

契約者にとっては、自分の契約している生保が破綻してしまって大きな損を被るより、あらかじめ予定利率を下げて生保を救済することによって損をする金額が少なくなるのでいいじゃないか!という論理になっています。

かつて、経済情勢の良かった頃には生保各社も調子がよく、高い予定利率でもやっていけるであろうとの予測から契約を取り続けていた。しかし、バブル崩壊後、経済情勢は一向に改善されることなく、とても予定利率をカバーすることが出来ないまま年月が過ぎたが、一旦は契約者に約束をしている以上、保険会社としては約束した数字は守らなければならない、しかしそれにも限界があり中には破綻してしまう会社も出てきた。 このままではいつまで経っても先行きが見えないので、約束した数字を引き下げてなんとかしたい!ついては契約者のみなさんにも協力を願いたいというところでしょう。

たしかにバブル崩壊後の日本経済については、大方の予想外に長期間にわたり低迷を続ける結果となり不景気が一向に改善されない状況にあります。そんな中で高い予定利率を保つなどということ自体に無理があるというのは誰にでもわかることです。

たとえば、これが良好な個人間の関係であれば、一旦はある約束した利率で金を預かったが情勢が変化したため約束が履行できなくなったので利率の交渉をしたい、ついては今後情勢が変化した時は元の利率に戻す、などの話し合いが出来るところでしょう。

しかし、考えてみれば保険契約においても同じで、生保会社は本来、契約者に対して正直に説明を行ない対処を要請すればよいことで、満足な説明を行なうことなく転換契約を勧めるなどということがあるので契約者から不信を買うということになるのでしょう。

そもそも契約者にとっては、予定利率そのものがよくわからないということもありますし、商品にしても内容がよくわからないというケースが圧倒的に多いと思われます。そこにもってきてマスコミ等の報道は不安感を煽るような内容が多いため誤解を招くということもあるように思われます。

ですから本当は保険会社がきちんと情報公開をして、契約者にわかるように説明すべきと思うのですが、実際にはそのようなことはありませんので困ってしまうわけですね。

予定利率引下げ問題については、契約者に対して保険会社経営陣が経緯と今後の対応策をきちんと説明して協力を求めるというのが本筋であって、法を基準にして、例えば解約による資金流出を防ぐために首相命令で解約停止などの措置を取るなどというのはかえって反感を買うものではないかと思います。

どうも情報公開とか説明についての大切な部分が欠落しており、保険業界が政府に助けを求めるという図式が見えるというところに問題があるように思えてなりませんね。

政府のいう構造改革が一向に進まないのと同じように業界の構造改革も根本的なところで進んでいないように思われます。保険商品というのは殊更わかりにくい構造になっており、その部分を利用して儲けてきた経緯が確実にあると思います。しかし時代は変わりつつあるわけですから、ここでも構造改革の必要性があることは間違いないでしょう。

一方、契約者の側でも高い保険料を支払って契約しているにも関わらず、満足にその内容を知らない、知ろうとしないという傾向があることに間違いはなく、損が発生しそうという情報を得て初めてその内容を知ろうとするというのは問題があったとしか言いようがありません。

今回の予定利率引き下げ問題にしても、案では3%の予定利率は確保するとの内容になっているようです。ということは、3%以上の予定利率契約についてのみ対象になるということです。

さらに対象になる契約であっても、現在支払っている保険料のすべてが貯蓄性のある商品の保険料かどうかは保険証券を見て確認しなければなりません。また、3%の予定利率ということは現在、新たに契約する商品よりはるかに条件的に良いものであることなどを検討すべきです。

この機会を利用して現在の契約内容をチェックしてみるというのもいいでしょう。少なくとも現在の契約内容を知るということは大切なことに違いありません。


(2003年5月14日



 追記

※この項で書いている記事は10年以上前のものです。したがって現在の状況にはマッチしない部分もありますが、過去の記事の保管という意味から、原文のまま掲載しています。

2016年12月19日



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