過去コラム保管場所

当サイト立ち上げ時以降、少しずつ書いていたコラムのバックナンバーです。

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 保険会社の勝手


私が外資系の損保会社AIUに入ったのは昭和51年であったが、この年の営業研修中に売れといわれた商品が「所得補償保険」というものだった。この保険はその前年だかに安田火災が認可を取った保険で、なんといっても目玉は損保会社の商品でありながら病気もカバーするという画期的な商品であった。

なにしろ損保会社の人に対する保険は傷害(簡単に言うとケガ)であり、病気をカバーするといったら「海外旅行傷害保険」の一部位で病気は生保の商品と分野調整されていたので、この「所得補償保険」は初めて損保で一般の保険として病気をカバーする、しかも入院とか通院にかかわりなく病気・ケガで仕事を休んだら、休んでいる間失われる収入を補填するという商品だったので売上の期待度も大きかった。

現実に確かに良い商品であり、駆け出しの営業マンでも簡単にしかも飛び込み営業で即決でそこそこに契約が取れた。飛び込みでしかも即決で契約を取るという発想にはちょっとびっくりしたが、この件についてはまた次回に譲るとして、これは商品力によるところが大きかったと思う。

なんといっても生保の入院給付金特約にしろ損保の傷害保険に付く入院日額いくらにしろ通院日額いくらにしろ入院した日数または実際に通院した日数に対していくら、という支払い形態であり日数も生保の場合一入院に対して120日、傷害保険は入院180日、通院90日限度という規定に対し、この保険は入院しようが通院しようが自宅療養であろうが、とにかく病気・ケガで仕事が出来なくなったら、契約の月額補償を免責7日(最初の7日間は支払いませんよと言うこと)で最高12ヶ月受けることが出来るというおいしい保険である。

おいしい保険というのはちょっと書き方が不適切であるかもしれないが、とにかく自営業の方、特にいわゆる一人親方的な仕事をしておられる方などにとっては最適の収入補償の商品であった。もちろん現在もちゃんと各社販売しているのでフリーで仕事をされてる方などは、ご存知なければ契約先の損保の代理店の方などに聞かれると良いだろう。

というよりそういった方々にはある意味で必携の保険と思います。

とにかくそんなわけで、まあ売れる商品であったため販売に精を出していたのであるが、そのうち各保険会社ともこの保険の事故が増え、保険金の支払いが増大した。契約者にとって良い保険は保険会社にとってはあんまりありがたくないのだ。その上、関西においては悪徳タクシーの運転手や悪徳医師やいろいろが組んだ保険金詐欺グループが捕まったが、このグループなどにも食い物にされていたなどの経緯があり、突然に販売規制がかかった。

保険会社も商売でやっているわけだから、売ったら売るだけ損が増えるような状態では販売規制もかけてセーブしようというのはわかる、しかし一年間無事故で満期を迎え、お客の側としては必要性も感じ継続契約を望む、また私としても「この保険はええ保険でっせ、あなたには絶対必要な保険です」と言って契約頂いた、しかも事故など無いのであるから当然、前年度と同じ条件で更改しても問題はないだろうという契約にすら免責日数を増やすとか保険金額を減額するとかの条件を付けてきた。

しかし、これは保険会社の勝手というものであろう、今も書いた通り、保険会社も商売でやってるので料率算定のミスがあったりとか、予想外に事故発生件数が多かったりとかしたら予定が狂うかも知れない、そのために規制しようというのはわかる、けれども既契約の無事故契約にまで規制をかける必要はないだろう。

困るのは善意の契約者さんであり、代理店である。こういうことはよくあることで、いつも最終的に迷惑を蒙るのは普通の契約者さんということになる。世の中そんなものと言われればそうかも知れないがちょっと納得しかねる、と思われませんか全国の代理店さん、外務社員の皆さん。


(1999年2月3日)



 追記

※この項で書いている記事は10年以上前のものです。したがって現在の状況にはマッチしない部分もありますが、過去の記事の保管という意味から、原文のまま掲載しています。

2016年12月19日



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