ますます失われる保険業界の信頼
つい先日、毎日新聞で大きく報道された生保各社における保険金不払い問題については、その規模が大きく、生命保険37社で2001~2005年度の5年間で不払い件数は計約25万件、総額は約290億円にのぼるとし、さらに今後契約者に請求を促したり、事実確認が必要な契約は少なくとも110万件におよぶとしている。
人気商品ともいえる3大疾病特約では、がんの告知をされていない場合など、受給できることに気づかなかった契約者や家族が請求せず、結果として、保険金を受け取っていない事例が目立ったとしているが、契約者はきちんと請求したのに、生保が診断書に記載された手術を見落とし、保険金・給付金が本来の受け取り額より少なかった事例も多かった。生保が十分な確認をしなかったのが原因。保険料が払い込まれず保険契約が失効した際に、本来なら契約者に返すべきお金を返していなかった事例もあった。ということから、いかにずさんな保険金支払い体制が取られているかを浮き彫りにした形になっている。
これでは、よく言われる保険会社は保険料(掛け金)はきちんと取るが支払う段になると保険金はきちんと支払ってくれないということを実証してしまうことになる。
それではますます保険業界に対しての信頼が失われることとなるだろう。
私が携わっている調査業務にあっても、被調査人のところに出向いた時によく言われるのが保険会社は支払いを渋るためにこのような調査を入れるのだろうということである。
調査に携わるものにとっては、保険会社は約款に基づいて保険金支払いを行うため、約款上の支払い規定に該当するか否かを確認するための調査と答えるが、先の損保各社の不払いや今回の生保各社の不払いが表沙汰になると困ったものである(笑)
まあ、もちろん保険会社の損害サービス部のすべてがということはないが、たしかに保険金支払いを少なくするようにとの意図を持って調査依頼がなされることはある。
いわゆる暗黙の了解という形での意志表示ではあるが、担当者ベースではあきらかにそういった意図を感じることもある。
しかし、第三者機関の立場にある者としてはあくまでも客観的事実を確認することが仕事であり、知りえた事実関係を隠すことはしない。
もっともそれは社内で提出した時点で、調査担当の者から手離れした時のことであって、最終的に保険会社に提出されるレポートがどうなっているかはわからない。
今回の生保各社における不払いの中で、がん保険などでは告知の問題もあり、契約者や家族が保険契約自体を忘れてしまい請求を起こさない例が目立つとあるが、この点についてはかつてガン保険を初めて世の中に出した保険会社はうまい方法を思いついたものだと感心したものだった。
わが国においては本人にがん告知をすることは少なく、その意味では本人ががんであることを知らず、また家族にがん保険契約を知らせていなければ絶対に保険金請求などは起こってこないからである。
このようなガン保険に限らず、自身が契約している保険契約については家族の誰もがわかるようにしておく必要がある。当サイトでは保険証券をすべてまとめてファイルに保管するようアドバイスしているが、契約者側にとっては保険商品という形のないものに少なからず金額を支払っているのだからそういったことは当然といえるだろう。
さらに保険金。給付金などが実際に少なく支払われるというケースにあっては、たしかに保険商品は複雑でわかりにくいものであるが、それぞれに商品内容を確認しておく必要がある。
よくあるケースでは保険会社には言っても仕方がないと簡単に諦めてしまうことである。
それは従来からよくあったことなのだろう。また保険金を支払う側がなんとなく優位な立場にあるような錯覚を覚えたりするものだが、決してそんなことはない。
保険会社にとって保険契約者はお客様であり、需要と供給のバランスでいえばあくまでも対等である。
それを優位な立場にいると勘違いするようなとんでもない担当者も存在する。
わが国においては、そもそも保険営業の成り立ちが不自然であり、特に生保業界にあっては長く地縁、知人関係を活用した販売組織による契約形態をとってきた。また、契約者側も特に必要性を感じないものの、義理もあって付き合いで契約をするというケースが目立ち、そのため保険料を支払っているにも関わらず、保険契約自体に無関心になってしまうということもあっただろう。
しかし、そんなおかしなことはないだろう。が、実際には今でもそのようなことは多いものと推測される。
保険契約者は自身が契約している内容を出来るだけ把握し、わからなければ保険会社に問い合わせるべきである。
保険会社は本来、約款に基づいてきちんと支払うべきであるが、前にも書いたように特約の新設や保険商品の多様化によって担当者ベースでもなかなか理解出来ていないというのが実態だろう。
保険金不払い問題が大きく世間に知らされ、このような経緯があって本来の保険契約というものが成り立つことを期待するところである。
筆者が活動する関西風に言えば、「ええ加減にせんかい!」というところであるが、それは保険会社、保険契約者双方に言えることでもある。
追記
※この項で書いている記事は10年以上前のものです。したがって現在の状況にはマッチしない部分もありますが、過去の記事の保管という意味から、原文のまま掲載しています。
2016年12月19日
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